オランダの大学院に合格した。
エラスムス大学ロッテルダムの国際社会科学研究院(通称:ISS)である。
開発学専攻の枠組みで様々なメジャーがあり、自分は農村開発を専攻する予定である。
このISSは開発学のランキングでは世界で13位(QS University ranking by subject)、EU圏では1位と、なかなか評判が良い。
イギリスの大学院進学情報は巷で溢れる一方、オランダに関しては情報が本当に少ない。オランダを専門とした留学エージェントも見当たらない。
そんなことで、オランダで開発学修士を取ろうという同志のために、大学院準備から合格をするまでをまとめてみたい。
[目次]
- プロフィール
- 大学院進学のきっかけ
- 大学院は国内か海外か?
- 志望校選び
プロフィール
大学で国際協力を専攻 ⇒ 某海外ボランティア ⇒ 国際NGO職員(インドネシア)
大学院進学のきっかけ
環境や農村開発分野の国際協力に関わってきたけど、もちろんエントリーレベル。案件形成から実施、M&E、報告書作成という一連の業務を経験したものの、専門知識が皆無なため、取り組んだ事業の効果が測定できない。
政府や企業のアプローチが機能せず、NGOも資金難により、現場を知らないドナーの意向に振り回される状況で、どうしたら「農村部で持続的な生計向上を達成できる社会経済的アプローチが可能なのか?」そんな問いが生まれてきた。
丁度、大型案件も無事に終了したので、ずるずるとバックオフィス業務を続けるよりは、大学院で一度、専門知識をベースに現場で得た問いを整理しようと思い立ち、大学院進学を決意。
国内か海外か?
日本国内なら費用も比較的に安いし、レベルの高い大学院も多い。ほとんどが2年制のリサーチマスターなので、研究能力を培うなら国内大学院の方が良さそうである。
一方、実務家のキャパビルとしてなら、海外大学院の方が政府官僚やNGO職員とのネットワークも形成できるし、より分野を絞った専門的なコースが多い。
農村開発に関して言えば、国内の大学院の場合、農学を中心としたスペシャリスト指向のMSc系プログラムはあれど、マネジメント系の農村開発プログラムはほとんどない。自分としてはマネジメント系のキャリア形成を目指しているため、実務経験を持った海外からの猛者達と議論をしながら開発について学びたい。そのような理由で自然と海外大学院を選択した。
志望校選び
さぁ、大学院に行くと決めたら志望校選び。開発学をメインとしつつも、農村開発、おまけに環境関連の専攻がある大学院がいい!
インドネシアに住んでいた時、たまたま電車内で隣合ったインドネシア人の研究者(ライデン大学院卒)から「インドネシアをテーマに研究するならオランダが一番良い」と言われたのを覚えていたので、「NetherlandsxDevelopment Studies×Rural Development」でググってみる。
見事にヒットしたのが、エラスムス大学ロッテルダムのAgrarian, Food and Environment Studies専攻(略称:AFES)。Taughtではなく、16ヵ月間のReseach masterなので、最後のセメスターはフィールドワークも含めて、修士論文に思う存分に時間を費やせる。専攻のシラバスを見ても、まさに自分が学びたい内容にピンポイントでワクワクが止まらない!
因みに、ISSの教授陣はリベラル色が強く、従来のネオリベラルな農村開発を批判的に考察している論者が多い。critical agrarian studiesやpolitical ecology、マルクス理論を用いた手法で現代の小農の状態を分析している研究が目立つ。
個人的には、現地の社会経済状況を度外視したトップダウンの開発政策や農村開発という名で小農の権利を無視して新植民地主義を推進する援助、企業活動を見たことがあるため、批判的な農村開発は一番研究したい分野である。そもそも農村開発=農業開発と捉えて、社会経済状況を分析せずに技術移転だけに注力するアプローチは古くないだろうか。
因みに開発学の文献を読んでいると、農村開発分野でISSの研究者が執筆しているものが多い。Saturnino Jun Borras, Max Spoor, Ben Whiteといった研究者はAgrarian Studiesの分野で世界的に有名である。
特にJun Borrasは研究者の傍ら、小農の権利を守るアクティビストとしても活躍されていて、かの有名なVia Campesina運動の設立にも携わった人物である。同氏がイニシアティブを執った、Initiatives in Critical Agrarian Studies (ICAS)シリーズの本は、批判的に農村開発を学ぶ上で本当に有益である。
シリーズの各本は、下記のサイトから無料でダウンロードできるので、ISSで農村開発を専攻することを決める材料として、読んでみるのも良いかもしれない。
因みに、このシリーズの日本語翻訳本はペーパーバッグが有料で販売されている。何年か前に買ってみたけど、翻訳が直訳調でものすごい読みにくい。しっかりと学ぶならオリジナル版をおすすめする。
他にもオランダで勉強したかった理由が:
- 元宗主国なのでインドネシア研究が盛ん
- インドネシアの政府職員の留学生も多いので、研究しながら議論できる
- ダッチモデルといわれるNGOや市民社会の活動を見てみたい
- 農業先進国(農業大好きなので最新農業技術も見てみたい)
- 先進的な水害・治水対策を学べる(インドネシアでも地盤沈下が深刻なため)
- ヨーロッパに住める
上記のような理由で、ISSを目指すことを決めた。
概要
創立:1952年(エラスムス大学ロッテルダムの傘下の研究機関)
名称:International Institute of Social Studies (ISS)
所在地:オランダ、ハーグ
期間:16ヵ月(9月~12月)
使用言語:英語
費用(授業料+滞在費+諸経費):40,000ユーロ(約650万円)
さて、次は出願である!(次のブログへ)